2019年4月15日から、平成31年度IT導入支援補助金の申請受付が始まりました。
IT導入支援補助金は、経済産業省が力を入れている「中小企業にITを導入することで、事業の効率化を図る」という施策を促進するための事業です。
今年で3年目となるIT導入補助金ですが、毎年、前年度の結果等を踏まえて内容が変化していっています。
2019年も、昨年と比べるとかなり内容が変わっています。そこで、昨年度との「違い」に着目してご説明します。
昨年度すでに申請を経験されている事業者の方は、この内容を抑えておけば2019年度の内容もあらかた把握できます。もちろん、今年新規に申請を考えているという方にも参考になると思います。
平成30年度補正予算では、「中小企業生産性革命推進事業」として、それまで別のものだった「ものづくり補助金(もの補助)」「IT導入補助金」「小規模事業者持続化補助金」の3つの補助金が、「中小企業・小規模事業者のIT化を進めるための補助金」は一体となって実施されます。
3つの補助金は、IT化の段階や補助額などによって役割が分かれています。
2019年度のIT導入補助金の申請要件に当てはまらない場合も「ものづくり補助金(もの補助)」や「小規模事業者持続化補助金」の要件に合致する場合があります。
どの補助金に申請するのが適切か、まずはITベンダーや専門家に相談するのがよいでしょう。
昨年との比較で一番注目されるのが、補助上限額の大幅アップです。昨年の50万円から450万円へと大幅に増額されました。
「導入できるITツールの幅を広げるため」ということで、限度額の引き上げが行われました。昨年は上限額が低すぎて予算を消化できなかったことも、限度額引き上げの背景にあるようです。
2018年のIT導入補助金では、ITベンダー(支援事業者)が交付申請を行っていました。しかし本来の姿に立ち返り、申請者(補助事業者)自身が申請をすることになりました。
ちなみに、申請は全て電子申請ですので、ホームページ上で行います。この辺りは、さすがにIT導入支援の施策だけあって、申請方法もIT化されています。
2018年度の事業では、補助対象となるITツールは20の「機能」に分類されていました。2019年度は、登録できるITツールの要件が変更されています。
「機能」が「プロセス」に集約された、というのが違いとのことです。文字で書くと何が変わったのかよくわかりませんが、表で比較してみると理解しやすいかもしれません。
今年度は、「より高機能で多面的に生産性を向上させるツール」が対象となっているのことですが、「ホームページ制作」がなくなったということは大きな変更点です。但し、ホームページ制作が全て対象外となったわけではありません。詳しくは後述します。
2019年度のツールは「A類型」と「B類型」に区分されることも、大きな違いです。各類型は、前述の「プロセス」をいくつ含むか、という基準で区分されます。
どちらの類型に区分されるかによって、補助上限額・下限額などが異なります。
まず、ソフトウェアの10の「プロセス」のうち、次表の青枠内にある8つの業務プロセスを必ず含む必要があります。
A類型
B類型
不思議な方式に思えますが、補助申請をしようとしているツールが業務効率化に役立つものなのかを、ある程度機械的に測るために編み出された区分なのでしょう。
補助限度額だけでなく、公募期間が類型によって異なります。補助限度額の低いA類型のほうは締め切りが6月12日までと早いので、注意が必要です。下の比較表をご覧ください。
上記以外にも、類型によって、効果報告の回数が異なります。補助上限額が高いB類型のほうが、報告の回数も多くなります。
類型は、交付申請時に、補助事業者が選択します。 採択されたあとに類型の変更(B類型で申請した後で、A類型に変更するなど)はできません。
昨年までの要件に加えて2つの項目が増えました。簡単にいうと
という2項目です。おそらく、昨年度にさまざまな法令違反やトラブルが起きたことが伺われます。
税務署の発行する平成30~31年中に納税された法人税の納税証明書の添付が必要です。例えば開業したばかりでまだ納税していないため納税証明書が出せない、といった事業者は、今回は対象外となります。
補助対象となるITツールが、「ソフトウェア」「オプション」「役務」の3つに区分されることになりました。
ソフトウェアは、3つのパッケージに区分されています。
ハードウェアやスクラッチ開発などは補助金の対象外です。例えば一部分でもスクラッチ開発を含む場合は対象外となるそうです。
但し、IT導入補助金の対象にはならなくても、「小規模事業者持続化補助金」や「ものづくり補助金」の対象となる可能性もあるので、そちらに当てはまらないか検討してみるとよいでしょう。
補助対象外となる項目は下記の通りです。
ソフトウェアの導入に伴って必要となる製品も、「オプション」として補助対象となります。但し「オプション」だけでは申請できません。
ホームページ関連費は昨年度から大きく変わっています。昨年度は情報発信や宣伝のためのホームページ制作も補助対象となっていました。
しかし2019年度のIT導入補助金は「業務プロセスを対象」とした内容に変わっているため、いわゆるコーポレートサイトやサービス紹介用ホームページ等は対象となりません。
但し、全てのホームページが補助対象から外れたわけではありません。予約システムやECなどの機能を実装した上で、そのインターフェイスとしてWebサイトを作成する場合には、補助金の対象となります。
また、情報発信用、宣伝用のホームページ制作については、「小規模事業者持続化補助金」のほうで補助対象に該当する可能性もあるので、そちらを検討してみるとよいでしょう。
ソフトウェアの導入に伴って必要となる『役務』も、補助対象となります。
ITツールを導入した後、有効に活用してもらうためにコンサルティングやサポートは必須です。この部分は今まで補助対象外で契約されていたか、ITツールの費用に含有されていたものと思われます。
これらの「役務」がしっかりと補助対象として可視化されたことで、より実効性のあるIT導入支援ができるようになったといえるでしょう。
登録申請されたITツール情報は、10営業日後に登録完了となり、IT導入補助金2019のホームページに掲載されます。
ただし、登録申請の内容に不足などがあった場合は、昨年は追加申請という形を取ってもらえましたが、2019年度は、一旦不採択となってしまいます。不採択となっても再申請は可能なのですが、スケジュールが初めやり直しとなり、また10営業日かかってしまうので注意が必要です。
やり直し申請をしているうちに日にちが過ぎていってしまう、ということがあり得ますので、早めに申請をしたいところです。
大前提として、そのITツールの導入が「労働生産性向上に寄与するかどうか」ということが問われます。それ以外は、補助対象外となるものを含んでいないか、が評価のポイントとなります。
クラウド製品として登録されたソフトウェアを導入する場合には、加点があります。これは、政府の情報システムの指針である「クラウド・バイ・デフォルト原則」という取り組みの一環です。経産省としてもその流れを汲んで、IT化を促進しようとしています
補助金申請を行う場合には、「経営診断ツール」で診断結果を出す必要があります。
この経営診断ツール、昨年度までは、複数のサイト間を遷移しなくてはならず、しかもわかりにくいと大変な不評を買っていました。「IT推進」を掲げる側(=国)が、ユーザビリティ無視のITツールを用いた手続きを強いているという、滑稽な状態だったのです。
2019年度は、申請マイページの中に経営診断ツールが設置され、交付申請作成時にマイページ上で補助事業者の方が作成することになります。
これによって、昨年度のように、診断結果のIDを別サイトで発行してから、マイページに戻ってまた入力するという、なんだかアナログな手順を取らなくてもよくなりました。
これも昨年度はなかった手順です。交付申請時、実績報告提出時に、携帯電話番号での本人確認が行われることになりました。このとき登録した電話番号あてに事務局から電話がかかる場合もあるので、第三者の携帯番号を登録することはできません。
これは、昨年度、支援事業者による代行申請が散見されたために増えた措置のようです。
申請時にはマイページ上で必要書類を添付(アップロード)する必要があります。昨年までこの作業は、支援事業者(ITベンダー) が行っていました。
しかし、複数の補助事業者を抱えるベンダーが申請作業の際に添付を間違えるという事態が発生したため、補助事業者自身がアップロードすることに代わりました。
センシティブな内容を含む書類を、無関係の他社のマイページにアップロードされては補助事業者側としてはたまりません。ここは本来あるべき姿になったといえます。
申請者(補助事業者)は、やらなければならないことは昨年より少し増えました。「補助金申請作業は支援事業者(ITベンダー)に丸投げ」という姿勢ではなく、自主性をもって補助金を申請するという意識が必要になります。
昨年度は、ご自身が補助金に申請している自覚のない補助事業者さんもいらしたということです。また、不正利用を防ぐためにも当然の手続きと言えます。
税金から拠出される補助金ですから、国民のお金を使わせていただいて、世の中に還元するという意識でもって、補助事業者側も、支援事業者側も取り組みたいですね。
本記事では、「2018年度と2019年度のIT導入補助金の違い」に注目してまとめました。申請時の注意事項、申請前に最低限確認することなどは、また別途記事にしたいと思います。
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