シェアリング・エコノミーとは「個人が保有する遊休資産を、それを必要としている人に貸出すことを仲介するサービス」のことです。
このビジネスモデルでは、貸し手は、使い道が無くて手に余った遊休資産を貸し出す、あるいは、利用して賃料や手数料などの収入を得ることができます。
一方の借り手は、資産を所有することなく必要な時に資産を利用できるようになります。つまり双方にとってメリットが生まれる経済活動なのです。
シェアリング・エコノミーを支えるのはICT(情報通信技術)、つまりインターネットをはじめとする通信技術を活用したコミュニケーション手段です。ICTによって、遠く離れた貸し手と借り手をつなげることができます。
世界全体のシェアリング・エコノミーの市場規模は、2013年では約150億ドルでしたが、2025年には約3,350億ドルにまで到達するという試算があります。およそ10年で20倍以上もの成長が見込まれているというわけです。
(出典)PwC「The sharing economy – sizing the revenue opportunity」
シェアリング・エコノミーの代表的な例が、空き家や空き部屋を、旅行などで宿泊する人のために貸し出す「民泊ビジネス」です。
この民泊ビジネスの先駆けとして有名なのがアメリカ発祥の「Airbnb」です。Airbnbは、空き部屋や不動産などの貸し手と借り手をマッチングさせるオンラインサービスです。個人・法人を問わず、一戸建て、アパート・マンション、土地など幅広い物件が登録され、世界中でこのサービスが利用されています。
インターネットを使って遠く離れた貸し手と借り手をつなぐビジネスでは、お互いの信頼関係を構築することが何よりも重要です。
Airbnbでは
などを導入して、お互いの信頼関係の維持に努めています。
Airbnbの効果は、一般の旅行者が訪れないような地域にも新たな経済効果が生まれることにあります。ホテルがなくとも、空き物件さえあればよいのです。
これにより、世界中の観光地の周辺部で恩恵を受ける都市がどんどん増えているのです。
この「民泊ビジネス」については、地方都市に及ぼす経済効果だけでなく、自治体が抱える社会的課題の解決への期待が持たれています。
それは、現在、日本各地の地方自治体が直面している「空き家問題」です。
空き家問題とは、所有者がわからない土地や空き家が増えることで、下記のような問題が生じます
防災・防犯上の観点で見過ごせない社会問題です。
空き家問題を引き起こす要因はいくつかあります。
等です。
相続には、煩雑な種々の手続きが必要です。
例えば、相続登記の申請手続、預貯金の相続手続、保険金の請求・保険の名義変更手続、有価証券の名義変更手続など…
法務省では、これらの手続きが簡単に行える制度を導入しました。
また、財務省では、相続税負担の解決に向け、さまざまな税制上の特例措置を導入しています。
ですが、地方や僻地にある不動産については、土地・建物の有効活用の期待が持てず、土地所有のメリットが乏しいことから、不動産の権利放棄が止まる気配が見られません。
こうした状況を改善するものとして期待されているのが、民泊ビジネスです。
観光地やその周辺部にある空き家を民泊ビジネスに活用できれば、大掛かりな投資をせずとも、旅行客を呼び込むことができるようになります。
そして、訪れる旅行客がその地にお金を落とし、また、その旅行客が口コミで情報発信すれば、さらに新たな旅行客を呼び寄せることにつながります。
一方、空き家が有効活用できるとなれば、空き家の所有者も、所有権を登記するようになります。つまり納税義務を果たすことにもなります。その地域にとっては空き家の減少による治安の改善と、地方税の税収増の両方が図られることになります。
一石が二鳥にも三鳥にもなって、その地方都市の成長と発展につながる可能性を持っているのです。
具体的にどんなサービスがあるかは、こちらの記事をご覧ください。
民泊ビジネスの例からもわかる通り、シェアリング・エコノミーには、単に経済面でのプラスの効果に留まらず、行政が容易に解決できない社会的な課題・問題を解決する力があります。
なぜなら、シェアリング・エコノミーはビジネスであり、それに関わる全ての人に経済的な恩恵を与えるためです。
インセンティブがあれば、モチベーションが高まるため、多くの人がそれに賛同して参加するようになります。
このように、シェアリング・エコノミーとは、ビジネスを通じて社会貢献を実現するものです。
かつては、社会への貢献と、企業の利益追求は別の次元のもののようにとらえられてきました。例えば公害問題など、企業が利益を追求しようとすると、社会に害が生じ、それは致し方ないことだという考えです。
2011年に、ハーバードビジネススクールのマイケル・E・ポーター教授がCSV(Creating Shared Value:共有できる価値の創造)を提唱しました。社会的な問題を、自社のもつスキルやアイデアで解決し、企業の成長につなげるという考え方です。
シェアリングエコノミーもこの考え方に沿っています。所有から共有へ、モノを奪い合う時代から分かち合う時代へ。
コペルニクス的な発想の転回が起こっている中、これからも社会に役立つサービスがどんどん生まれてくることでしょう。