シェアリングエコノミーはグローバルに拡大しており、2025年には世界の市場規模は約3350億ドルにまで達する見込みです。2013年に約150億ドル規模であったことを考えると爆発的な成長速度です。
シェアリングエコノミーの1つであるAirbnbは、2015年の時点でニューヨークへの直接経済効果は9.15億米ドルだと発表しました。
新興のサービスがなぜこんなにも大きな経済効果をもたらしたのでしょうか。
今回はアメリカにおけるホームシェアリングを取り上げ、過去と現状を比較し、考えていきたいと思います。
ニューヨークのホテルは世界的に見ても超高値です。1泊2万円は一般的で、高級ホテルともなれば、1泊10万円も当たり前です。
ホテルを安く抑えたいのであれば、狭いけれど清潔で立地も良い pod51(ポッド51)というホテルが有名です。「僕も若い時は出張でよく利用していたよ」といった話もよく聞くホテルで、大体1万円程度で泊まれます。
Airbnbが登場する前は、宿泊費を抑えたい場合一番に候補にあがるのは“Bed and Breakfast (以下B&B)”だったのではないでしょうか。B&B(ビーアンドビー)とはその名のごとく、ベッドとブレックファーストをセットにした1泊朝食付サービスの総称で、多くは家族経営の小規模な民宿などを指します。
安価で宿泊できるこのサービスが、少し前までの格安旅行者の間ではメジャーに使用されていました。「ビーアンドビー」という呼び名は、Airbnb(エアビーアンドビー)にも使われています。Airbnb は、B&Bの提供者と旅行者をインターネットでマッチングするCtoCシェアリングサービスだからです。
まだAirbnbが存在していなかった当時、B&Bを探す手段は、旅行ガイドブックやインターネットサイトでの検索でした。目当ての宿が見つかったら、家主さんにメールを送り、空室や値段の確認を行います。予約が取れなければ再度検索し、連絡と確認を繰り返すといった手間のかかる作業でした。
では、Airbnbの登場で具体的に何が変わったのか、利用者目線で見ていきましょう。
ホテルを予約する際には、まず何をするでしょうか。旅行会社に行く人もいれば、booking.comやExpediaで探す人もいるのではないでしょうか。
その時、私たちは何を便利に感じるかというと、目的地と宿泊日程を入力する(または窓口で伝える)だけで、予約可能な宿泊施設がすぐにわかることなのです。
そしてこの便利さをB&Bで可能にしたサービスこそがAirbnbなのです。
Airbnbには他のシェアリングサービスと同様に、サービスの提供者と利用者をお互いに評価する機能が備わっています。
この評価機能により、口コミサイトやTwitterを検索して評判を確認していた手間が省ける様になり、安心して宿泊先を利用できるようになったのです。
Airbnbの最大の特徴と言えば、個人が宿泊施設を貸し出しているということです。ゆえに、海外の一般的な民家に宿泊できます。外国で、まさに住む様に暮らす事が可能になるのです。また、安い宿泊施設ばかりではなく、豪邸をまるまる一軒貸し出しているホストも多いのが特徴です。複数人で宿泊することでコストを下げ、広く豪華な家にリーズナブルな価格で宿泊することもできるのです。
ヨーロッパでホームシェアリング事業を成功させたマリオットホテルグループは、アメリカを中心にHomes&Villasという新たなサービスを提供しています。
2000軒もの豪華できらびやかな家を、アメリカ、ヨーロッパ、カリブ海、ラテンアメリカで提供することでAirbnbに対抗しています。また、大手ホテルグループである強みを活かし、信頼性のあるサービスとアメニティーを顧客に用意しているのです。
このように、今やハウスシェアリングの概念はベンチャーキャピタルのみならず、大手企業の経営戦略にも影響を与えています。
他にも、2016年にはアコーホテルが富裕層向け民泊仲介サイト「ワンファインスティ (Onefinestay) 」を買収し、2017年にはハイアットホテルがホームシェアリング「オアシス・コレクションズ (Oasis Collections) 」に巨額の投資をおこないました。
いっぽう、Airbnbの市場価値は2016年に310億ドル(約3兆4700億円)に達し、大半の上場ホテル運営会社を上回っています。
既存のホテル業界とベンチャーが切磋琢磨して新規サービスが生まれ、アメリカの民泊サービスはさらに大きな市場となっていくでしょう。
今後Airbnbが更なる成長を遂げるのか、既存企業が新たな戦略で対抗するのか、楽しみな業界です。