国勢調査によると、1985年頃まで5%未満だった生涯未婚率は1990年頃を境に急激に増え始めています。今や男性の4人に1人は生涯結婚しないという状況となり、単身の高齢者が増えてきました。
さらに、2019年の出生数は、統計開始以来、初めて90万人を下回る見込みで、少子化も深刻化する一方です。お墓を作っても、子どもや孫の代までお墓を承継する見通しがたたない時代になってきました。
「子供がいない」「子供が女の子だけ」「子供に迷惑をかけたくない」などの理由から、お墓の承継者がいなくても維持できるような新しいお墓の形態が求められています。
納骨堂などの集合墓では、個別の納骨スペースを設けられる場合がほとんどです。その場合は年間管理費が継続的に必要になります。
契約により異なりますが、個別スペースでの保管期間は設定されており、7回忌までとして6年間の保管や、33回忌までの32年間の保管を行うなどのパターンがあります。その後遺骨等は合同墓・合祀墓へ移動します。
寺院、墓地霊園側は、お墓を供給する事業者です。お墓市場での生き残り策として、時代のニーズをくみ取ったお墓を開発しています。例えば、初回一括支払い方式で年間管理費などの継続的な費用はかからないお墓等です。また、低価格化での大量販売の傾向も見られます。
お墓の形態は、単独墓、集合墓、合祀墓(共同墓)の大きく3つに分けられます。
単独墓は、従来からあるお墓の形です。屋外の専用区画に、個別に墓を作ります。
集合墓は、集合納骨スペースの中に、小規模の個々の納骨スペースが分割され、その中に遺骨、位牌などを置く形態です。納骨堂などがこれにあたります。集合墓は都市部での省スペース化の流れで生まれました。住宅でいえば単独墓は個別住宅、集合墓はマンションなどの集合住宅のようなもので、納骨スペースのシェアといえます。
合祀墓は、集合墓のように個別に納骨スペースは設けません。他の人の遺骨と分けずに埋葬し、記念碑や記念樹などを設置したりする形態です。樹木の下に遺骨を埋葬する樹木葬などがそれにあたります。
合祀墓はスペースのシェアリングという側面もありますが、明確な区切りがないという点で集合墓と大きく異なります。
合祀墓は、従来のお墓の在り方に対する考え方をドラスティックに変えるものです。
埋葬される場所、シンボルなどの形態で種類があります。
①像、塔、記念碑などの地下に埋葬される供養塔形態
石塔、宝塔、観音像、涅槃像、マリア像などの供養塔の地下に、遺骨を納める場所(カロート)を設け、遺骨を他の人と一緒に土中もしくは収納スペースの中に埋葬するもの。
身元の分からない人の無縁墓や大震災などで個別の遺骨の分別ができない被災者の墓などもあります。
②樹木の下の土中に埋葬される樹木葬形態
樹木の下の土中に、遺骨をそのままか粉末にして、他の人と一緒に埋葬するものです。変形で袋に入れる形式をとっているものもあります。
③花壇形態
花壇の下の土中に、遺骨をそのままか粉末にして、他の人と一緒に埋葬するものです。
合祀墓のメリットとしては次の点などがあります。
①合祀墓は自分の子孫などの承継者がいなくなっても、他の人と一緒に供養されることで将来も安心なこと。
②年間管理費が不要で、価格が安くなること。
合祀墓のデメリットとしては次の点などがあります。
①遺骨を他の人の分を一緒に埋葬するので後から取り出すことができないこと。
②個別の遺骨の場所があいまいになるため、故人が眠る場所が明確でないことに不安や違和感を覚える遺族がいる場合があること。
樹木葬とは、墓地の中の植栽された樹木スペ-スや自然林の樹木の下の地面に、遺骨をそのままか粉末状にして埋葬する方法です。土に還る形で埋葬されます。他の人の遺骨と一緒に合葬される形が基本です。
5万円~80万円程度で標準は20万円台です。人気の場所では倍率が高い場合もあります。
東京など大都市部では自然回帰の考え方も加わり、樹木葬が人気です。例えば、都立小平霊園では、樹林墓地と樹木墓地の2形態での樹木葬墓地を開発しています。
樹林墓地とは、共同の埋蔵施設があり、遺骨は他の人の遺骨と一緒に合祀されるものです。遺骨は納骨袋に入れて埋蔵します。遺骨を火葬されたままの状態で埋蔵するか、あるいは粉骨するかは、遺族の希望により選ぶことができます。
樹木墓地とは、樹木の周りに遺骨を1体ずつ個別に埋蔵されるものです。その他の樹木葬墓地では、本来の形で遺骨を袋に入れないものもあります。
死は、誰もが直面する課題です。 自分の死後の問題、例えばお墓や遺骨のあり方については、全ての人が考えておく必要があります。
今、多様な分野でシェアの概念が拡大しています。お墓も、所有するのではなくシェアする方向へ進んでいきつつあります。
死後の遺骨のあり方についても、土に還り自然と一体化することを理想とする「合祀墓」という形態は、人生最後の究極のシェアリングといえそうです。