Connectors機能の概要と目的
ChatGPTの「Connectors」機能を利用すると、ユーザー自身のデータソースや社内ナレッジをChatGPTに取り込むことができ、チャットでの回答をより実践的かつパーソナライズされたものにすることが可能になります。Connectorsを通じてChatGPTはGoogle DriveやGitHub、SharePointといったサードパーティのアプリケーションに安全に接続でき、ファイルを検索したり、最新のデータを取得したり、コンテンツをチャット内から直接参照したりといった操作が実現します。
このConnectors機能には大きく2種類の用途があります。1つはチャット画面から行う素早い検索で、日々の資料探しやコンテンツ要約などに適し、検索結果がチャット内にプレビュー表示されます(ChatGPT検索と呼ばれる機能)。もう1つは複数の情報源をまとめて深く分析する高度なリサーチで、AIが社内外のデータを横断的に読み込み、推論・分析した上で出典付きの詳細なレポートを生成してくれます(ディープリサーチ機能)。前者はちょっとしたQ&Aや反復的な調査に便利で、後者は競合分析やコードレビュー、長期的なレポート作成など複雑な課題に威力を発揮します。
現在利用可能な連携サービス
2025年現在、ChatGPTのConnectors機能(ベータ版)では主要なクラウドサービスや業務ツールとの連携が可能です。以下のようなサードパーティ先と接続できます。
- Google系サービス: Google Drive、Googleカレンダー、Gmail など(※Google Driveには指定したコンテンツを事前にインデックス化する同期型コネクタも用意されています)。
- Microsoft系サービス: OneDrive、Outlook(メール・カレンダー)、SharePoint、Teams。
- ファイルストレージ: Box、Dropbox。
- 開発ツール: GitHub(リポジトリ内のコードやドキュメントを検索可能)。
- 業務アプリ: HubSpot(CRM)、Linear(プロジェクト管理)など。
- カスタム連携: 上記以外にも、Model Context Protocol (MCP)に準拠したカスタムコネクタを作成すれば、自社専用の内部システムや他のサービス(例: Salesforce など)ともChatGPTを連携できます。ただしカスタムコネクタはOpenAIによる動作保証がない開発者向けの機能であり、信頼できるアプリに対してのみ利用すべき点に注意が必要です。(現在はまだPlusプランでは利用できないようです)
※Connectors機能はChatGPT Plus/ProプランおよびEnterprise/Team/Eduプランのユーザーが利用できます。一部のコネクタ(*印のサービス)は欧州経済領域(EEA)・スイス・英国のユーザーには現時点で提供されていません。
Connectorsの設定と使い方
Connectorsを利用するには、まずChatGPTに外部アプリを接続する初期設定が必要です。その後、チャット画面で実際にデータ検索や分析を行います。
● 連携アプリの接続設定(初回): 以下の手順でChatGPTに外部サービスを接続します。
- ChatGPT画面右上のプロフィールアイコンから Settings(設定) を開きます。
- 設定メニュー内の Connectors タブを選択します。
- 一覧から接続したいアプリを探し、対応する Connect ボタンをクリックします。
- 選択したアプリのログイン画面にリダイレクトされるので、サインインしてChatGPTへのアクセス許可を与えます。
- 権限の内容を確認し承認すると、ChatGPTとそのアプリの連携が完了します。
ChatGPTの設定画面にある「Connectors (Beta)」の一覧画面。BoxやDropbox、Gmailなど利用可能なアプリが表示されており、ここで各サービスをChatGPTに接続できる。
● チャットでコネクタを使う方法: アプリの連携後、ChatGPTのチャット画面で以下の手順によりデータを検索・活用できます。
- 新規チャット を開始します。
- メッセージ入力欄の下にある Tools(ツール) をクリックします。
- Search connectors(ChatGPT検索)または Run deep research(ディープリサーチ)を選択します。
- 質問の対象としたいデータソース(連携したアプリ)を1つ以上選択します。
- 知りたい内容や依頼したいタスクをChatGPTに質問します。例:「Salesフォルダ内のQ2目標資料を探して」や「社内Dropboxから先週のプロジェクト計画書を見つけて」など。
- ChatGPTが回答を生成したら、文中の**引用(脚注番号)**をクリックすることで、元データを該当の外部アプリ上で開くことができます。
(※Google Driveの同期コネクタなどを有効にしている場合、ChatGPTはユーザーが明示的に検索先として選ばなくてもインデックス済みデータを自動参照し、回答に活用します。必要に応じてプロンプト内で特定の同期データを含める・除外する指示を出すことも可能です。)
活用ユースケースの具体例
Connectorsを活用することで、社内データとChatGPTの生成AIを組み合わせ、さまざまな業務で効率化や高度化が期待できます。以下に具体的なユースケース例をいくつか紹介します。
- 営業チームでの活用: ChatGPTがCRM(顧客管理)システム内のデータを分析し、新たな商機の発掘や提案資料の作成に役立ちます。例えば、HubSpotを連携していれば「ターゲット企業を年商・業界・テクノロジースタック別にセグメント化し、エンタープライズ向けの拡販チャンスが大きい上位企業を特定して」とChatGPTに依頼することで、CRM内の顧客データから有望な見込み先を洗い出すことが可能です。その結果をもとに営業リストを作成したり、個別のアプローチ戦略を立案したりできます。
- カスタマーサポートでの活用: 過去の問い合わせチケットや顧客データを横断分析し、サポート業務の改善につなげることができます。例えば「カテゴリ別に過去のチケット件数の季節的な傾向を分析し、次の四半期のサポート要員計画を立てて」とChatGPTに質問すると、時期ごとの問い合わせ増減パターンがレポートされ、人員配備の最適化に役立てられます。さらに結果を基に、FAQの充実や特定期間の自動応答強化など、具体的な施策立案も支援してくれます。
- マーケティング・企画業務での活用: 社内に点在するデータから必要な情報を素早く引き出し、レポート作成や戦略立案に活かせます。例えばプロダクトマネージャーが「過去3ヶ月の製品XXの地域別売上データを集計し、四半期ごとの傾向を分析して」と指示すれば、ChatGPTがデータベースやスプレッドシートから関連データを自動抽出し、視覚的にも分かりやすい分析結果をまとめて提示してくれます。これによりデータ分析に費やす時間を削減し、より創造的なタスクに集中できます。
プライバシーとセキュリティ上の注意点
Connectors機能を利用するにあたっては、プライバシー保護やセキュリティの観点から以下の点に注意が必要です。
- サードパーティサービスの利用規約: 接続されたアプリはすべて第三者のサービスであり、それぞれ独自の利用規約やプライバシーポリシーに従います。ChatGPT経由でデータにアクセスする際も各サービスの規約範囲内で利用されるため、重要な機密データを扱う際は各サービスの信頼性や規約を確認しておきましょう。
- データの安全性管理: OpenAIはコネクタ経由のデータを送受信する際、業界標準の暗号化(Encryption)を適用し、安全に保護しています。認証にはOAuthが用いられ、各ユーザーが自分のアカウントでログインして許可した範囲のデータ(読み取り専用のスコープなど)にのみChatGPTがアクセスします。また、不正なプロンプトによって外部データが流出しないよう監視・検知の仕組みを設けるなど、セキュリティ強化にも継続的に取り組んでいます。
- モデル学習への利用: ChatGPT EnterpriseやTeams、Educationプランの場合、コネクタでアクセスした情報がOpenAIのモデル訓練に使われることは ありません。一方、ChatGPT FreeやPlus/Proプランの利用時には、既定ではコネクタ経由データが学習に利用されることはありませんが、ユーザーが「モデルの改善に協力する(Improve the model for everyone)」オプションをオンにしている場合に限り、そのデータがモデル改良目的で使用される可能性があります。機密性の高い情報を扱う際には、この設定をオフにしておくことが推奨されます。
- 管理者による制御: EnterpriseやTeamプランでは、ワークスペース管理者が組織内で利用可能なコネクタを選択的に有効化/無効化できます。ベータ版提供中の現在、コネクタはデフォルトで無効になっており、必要なサービスのみを管理者が許可する形になっています。加えて、例えばGoogle Drive(同期コネクタ)の場合、インデックス対象を特定のShared Driveやフォルダのみに制限したり、特定のファイル種類(例: PDFや画像)を除外するといった詳細設定も可能です。組織のセキュリティポリシーに沿って、管理者が適切にコネクタ利用をコントロールできる仕組みが用意されています。
- カスタムコネクタ利用時の注意: カスタムコネクタは開発者向けの高度な機能であり、OpenAIによる公式の動作検証・サポートが行われていません。そのため、自社開発の内部ツールや実績のある信頼できるサービスのAPIに限定して利用し、不審なサービスや出所不明のコネクタを安易に追加しないようにすることが大切です。
今後の展望
ChatGPTのConnectors機能はまだベータ版ではありますが、OpenAIは将来的にさらに多くの外部ツールとの連携を拡大していく計画です。今後リリースノートなどで新しいコネクタ対応が随時発表される見込みであり、企業ユーザーから要望の多い各種業務アプリやコラボレーションツールへの対応も期待されます。現時点ではテキストデータの検索・分析に特化していますが、画像ファイルやスキャンPDFなどビジュアルなデータの解析機能についても、将来的に追加される可能性があります。ChatGPT Connectorsは業務におけるAI活用の幅を広げる大きな一歩であり、これからのアップデートにも注目すると良いでしょう。
また、掲示板サイトが簡単に作れるサービス SHARE info も MCP に対応させAIと連携できるか模索中です。大勢で SHARE info に投稿した情報を AI のチャットで調べたり要約したり、掲示板への書き込みや投稿へのコメント書き込みもできるようになれば、利便性が高くなりそうです。
参照情報: ChatGPT Help Center「Connectors in ChatGPT」ほか(OpenAI, 2025年更新)