マーケティングにおけるクリティカルマスとは、特定の商品やサービスが世の中に受け入れられる過程で、市場全体の占有率が一定の分岐点を超えると、加速度的に普及率が上昇する法則のことです。
これは米国の社会学者エベレット・ロジャースが著作の中で、1962年に提唱したものです。ちなみにクリティカルマス状態となるのは、市場全体の占有率が約16%を超えた時点と言われます。
一般的に、新しい商品やサービスを市場へ投入すると、その普及の仕方には一定の傾向が現れます。まず最初に反応するのがイノベーターと呼ばれる先進的な消費者層です。
イノベーターには未知の商品やサービスを、「新しい」というシンプルな理由から、いち早く自らのライフスタイルへ取り入れる性質があります。ただし、イノベーターが市場全体で占める割合は2.5%程度なので、この段階では世の中に普及しているとは言えません。
そこで重要になるのが、アーリーアダプターと呼ばれる消費者層です。この人々はイノベーターほど早くはないものの、やはり比較的初期の段階で、未知の商品やサービスを自らのライフスタイルへ取り込もうとします。
その一方で、それまで続いてきた一般的な価値観とのバランスも重視する傾向が強く、この点がイノベーターとは異なる大きな特徴です。
ちなみに市場全体で占める割合は約13.5%ほどですが、アーリーアダプターの後ろに控える保守的な消費者層へ影響するため、クリティカルマス状態へ導く大きなカギを握るとも言われます。
例えば女性向けに斬新なデザインの衣類を市場へ投入した場合、イノベーターに普及しても保守的な消費者層の反応は鈍いですが、アーリーアダプターにまで普及が広がると、その様子を見てから購入を判断するようになります。つまりアーリーアダプターは保守的な消費者層を牽引する、オピニオンリーダーの役割を果たしているとも言えます。
そしてさらに保守的な消費者層が強く反応し、市場全体に占める割合が約16%を超えれば、一気に普及率が跳ね上がって、クリティカルマスへと至るのです。