「ブロードリスニング」とは「ブロードキャスト」の逆で、単なる「意見の収集」を超えて、多くの人々の声を効率的かつ網羅的に把握し、実用的な洞察を引き出す手法です。この方法では、SNS、レビューサイト、フォーラム、オンラインアンケートなど、多様な情報源から意見を集めます。
しかし、それだけではありません。収集した膨大なデータをAI(人工知能)を使って効率的に分類・分析し、意思決定者が理解しやすい形にまとめることが特徴です。
従来の意見収集とは、には以下のような課題がありました。
ブロードリスニングはこれらの課題を解決します。
AIを使うことで、多くの市民が何を求めているのかを効率的に可視化することができるようになったのです。
以下は、ブロードリスニングがどのように意見を収集・整理し、意思決定者に役立てられるかを示したプロセスです。
簡略化して図解すると以下のような流れになります。
こういったブロードリスニングのプロセスは、民主主義を実現するための強力な手法として注目されています。
SNSやオンラインフォーラム、アンケートなど多様なデータソースから市民の声をAIで分析・集約し、政策に反映することができるからです。この手法を活用することで、従来のトップダウン型の政治では拾いきれなかった多様な意見や潜在的な課題を浮き彫りにできます。
ブロードリスニングは、透明性と参加型の民主主義を進め、政治と市民をつなぐ新しい形のコミュニケーションを可能にします。
台湾のオードリー・タン氏が推進した「vTaiwan」では、デジタルツールを通じて市民が政策形成に参加し、ライドシェア規制などの社会課題を効果的に解決しました。
2024年の東京都議選で15万票以上の得票をしたAIエンジニアの安野たかひろ氏は、2025年1月に「デジタル民主主義2030」を掲げた新プロジェクトを発表。
オープンソース形式でブロードリスニングの仕組みを公開し、意見集約のプロセスの透明化を図りながら効果的に多くの意見を収集し、政策に反映させる仕組みを構築するとしています。
ブロードリスニングは、単なる「意見収集」ではなく、AIを活用して膨大なデータを効率的に整理し、意思決定者に実用的な洞察を提供する画期的な手法です。
これにより、従来型の意見収集の課題を解消し、迅速かつ的確な意思決定を支援します。この手法は、特に政治の政策立案の過程を、密室政治から公開されたオープンな議論の場へと大きく変革する力を持っています。
行政機関が政策や条例などを策定する際に、事前に案を公表して国民や市民から意見を公募する”パブリックコメント(いわゆるパブコメ)”についても、今後はブロードリスニングの手法が取り入れられていくことは間違いありません。